かって、患者の居住地域の周囲には、深い空堀と高い土手があり、逃走防止の有刺鉄線が張られていた。一度入所した患者は、この外へ、再び出ることはなかった。悲しい歴史だ。
多摩の桜は、澄むように美しい。東村山市の緑濃い狭山丘稜のはずれに、国立療養所・多摩全生園がある。ハンセン病の国立療養所で、全国にある13施設の一つだ。今年の9月で、満90周年を迎える。11万坪の敷地の中に、今も、570名の人々が、後遺症と高齢化と戦いながら、静かに生活している。ハンセン病は、ノルウェーのA・ハンセン医師が、明治5年発見したライ菌。主に、皮膚や抹消神経が侵される感染症だ。現在は、感染しても,発病は稀で、外来で治療できるが、昔は、特効薬がない不治の伝染病と誤解された。政府は、らい予防法で、隔離政策をとり、世間に恐怖と偏見をあたえた。政府は、患者に謝罪し、入所者の被害回復、権利擁護、療養所で暮らす人々が、地域から孤立することなく暮らせるよう、昨年6月、基本法が制定され、この4月1日施行された。資料館で、現実に直面し、私達は、何と大きな過ちを犯してしまったのだろうか、悔悟の念ひとしおの思いだった。今も、全国には、13施設、2600人の入所者がおり、平均年齢80歳という。施行された新法で、早く、最大限の支援が必要と、資料館で、高松宮殿下が、訴えているように聞こえた。